Home / 恋愛 / それでも…愛 / 第6話 伝える

Share

第6話 伝える

last update Last Updated: 2025-09-22 06:00:00

私は、ついに長岡さんにだけは、本当のことを伝えることにした。

会議室から出ると、長岡さんは、

「大丈夫だった?」と聞いてくださった。

「あ、はい! あのう〜長岡さん! 今日又お昼休み、一緒に食べても良いですか?」と聞くと、

「うん、もちろんよ!」と。

いつも長岡さんは、席で手作りのお弁当を食べていらっしゃる。

私もお弁当の時は、席で食べるが、時々食べに出てしまったり、買いに出たりしている。

仲良くしていた同期の女子は、皆んな結婚して辞めてしまったのだ。

さほど話さない同期なら居るが、一緒に昼食を食べるような間柄ではない。

なので、私が今、

1番仲が良いと思っているのは、長岡さんなのだ。

私が勝手に思っているだけかもしれないが、信頼している先輩女性だ。

だから、早く本当のことを話したい!

もしかすると、

『どうして、言ってくれなかったの?』と、怒られるかもしれないと思うと怖い。

しかも、長岡さんは、少なからず律樹に興味があるようだから、

もし、私たちのことを話すと、避けられてしまうかもしれないという思いもあって不安なのだ。

そして、お昼を知らせるチャイムが鳴った。

「じゃあ、お弁当食べよう〜」と、言ってくれる長岡さん。

「はい!」

まずは、給湯室に手を洗いに行く。

律樹は、他の課長たちと食堂へ行くようだ。

出掛けて行く時に、チラッと目が合った。

お互い目配せをしてしまう。

まるで目だけで会話しているようだ。

席に戻ってお弁当箱を開けると、

「みありちゃんのお弁当、いつも可愛い〜! 美味しそう」と褒めてくれる長岡さん。

「私のは、いつも地味なのよ〜ザ・茶色弁当よ!」

と、笑わせてくれる。

見事に茶色弁当だ!

「でも、茶色の物って、最強ですよね」と言うと、

「そうなのよ! 美味しい物に茶色が多いだけよね〜ハハッ」と笑っていらっしゃる。

「「いただきます」」

とりあえずお弁当を食べ始めた。

長岡さんは、先程の女性たちのことを話し出した。

今どきの若い子は、周りのことなど気にせず、堂々と彼女が居るのか? と聞けて凄いなと、

ある意味感心されている。

私も、私たちには、出来ないことだ! と同意した。

そして、その流れで律樹の話になったので、

「長岡さん!」と切り出した。

「ん?」

「私……長岡さんにお話しなければならないことがあるんです」と言うと、

「何? 改まって〜」と言われた。

私は、律樹とのことを話し出した。

まず、律樹が、以前4年間お付き合いしていた元彼だ! と言うことを話すと、とても驚かれた!

「えっ!! そうなの〜っ!」

当然だ。

当時も私は、この会社で働いていたのだから、お付き合いしている彼が居ることは、元々話していたが、まさかそれが律樹だとは……

結婚の話が出た時、あちらのご両親に反対されて、別れてしまったのだということも、話していたから全てご存知なのだ。

だから、この一連の流れのことをとても驚かれていた。

全てを話すと、

「みありちゃん! 本当に良かったわね〜彼と再会出来て〜」となぜか長岡さんが泣きながら喜んでくださった。

当時からのことを知ってくださっていたからこそ出来た話だ。

今思えば、律樹と別れたあの頃から長岡さんは、私を元気付ける為に、いつも『あの人イケメンよね〜?』などと私を笑顔にする為に、明るく接してくださっていたように思う。

「そっかそっか、本当に良かった!」と、私を抱きしめてくれたのだ。

別れたのは、母の介護のこともあった!

ということも長岡さんは、よくご存知だから、

本当に母のように喜んでくださっている。

たった2歳しか違わないから母だなんて言うと失礼だが、本当にほんわかされていて、私はいつも癒されているので優しい方だと思っている。

「ありがとうございます」と、私も涙を流していた。

皆んな食堂や外食されているようで、誰も居なくて良かったと思った。

「今度は、絶対に離れちゃダメだよ!」とおっしゃる。

「はい!」

そして、今、律樹から『一緒に住もう』と言われていることを話すと、

「良いじゃない! 何を迷ってるの?」と言われた。

島田さんのことを話すと、

「う〜ん、でも、こちらと手を組んだのよね?」と、

「まあ、無理矢理ですけど……」と言うと、

「そのまま目を瞑ってもらっとけば良いんじゃない? 透明人間として」と笑っておられる。

そして、長岡さんは続けて、

「私思うんだけど、もしかして彼のお母様も半年間も泳がせてたのなら、実はもう最初から分かってたんじゃないのかなあ?」と言ってくださった。

律樹が私を探し続ければ、いつかは、私と再会することも想定出来たことだと。

これから先のことは、きちんと2人で話し合って、ご両親にもいつかは、分かってもらえれば良いんじゃないかと……

それに、子どものことも色々な選択肢もあると言うこと。

過去は、変えられないけど、未来は今から作るもの。だから、今を大切にしなきゃと……

「先のことより、今みありちゃんの気持ちに正直になった方が良いと思うよ! もう後悔しないようにね」

とおっしゃってくださった。

私もどこかでそうかもしれないと思っていた。

かと言って、まだ結婚を許されたわけではない。

だから、私は迷っていたのだ。

「私は、みありちゃんたちを応援する! 幸せになって欲しい! こんなにもお互いが想い合ってるなんて素敵よ! それに、お似合いだもの〜」

と言ってくださった。

とても嬉しかった。

やっぱり長岡さんには、話して良かったと思った。

でも、「やはり敵は多いから、気をつけてね!」

と言われた。

「はい!」

「でも、·の方が溺愛してるようだから、大丈夫よね〜」と、ニヤニヤ笑っていらっしゃる。

妙に照れてしまった。

数分経つと、あっという間に、続々と食堂から帰って来られる人波。

律樹も食堂から帰って来たので、目が合ってニコッと笑ってみた。

すると、律樹もニコッと笑ってくれた。

ただ1人それを、私たちの関係を知っている長岡さんが見て、ニヤッとして、

「あ〜もうダメだ〜私トロけちゃう〜」

と両頬に手をやり、クネクネされている。

「ふふふ」と笑ってしまった。

「大丈夫ですか?」と言うと、

「もう大変よ! これからの···が楽しみなのと、私のカラダが持つかなと言う心配で……」と笑っておられる。

「ご心配をおかけします」とお辞儀した。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • それでも…愛   第20話 報告

    「おはよう〜」 「おはよう〜」 「あれ?」と昨夜のことを思い出す。 律樹が私をジーッと見つめて微笑んでいる。 「あっ、ごめん」と言うと、 「ふふ、疲れてたんだもんな」と私の髪を撫でる。 「うん」 「新婚初夜だったけどね」と言われて、ようやく気がついた! 「ああっ! ごめ〜ん! やっちゃった」と言うと、 「ううん、やってないの」と微笑む律樹。 「ふふふっ、そうだけど……」と苦笑する。 そして、私をぎゅっと抱きしめて、 「じゃあ、今夜楽しみにしてる」と言われた。 「!!!!」 ──ヤダ〜もう〜朝から夜の約束だなんて…… 「ふふ〜」と笑って誤魔化しておこう。 チュッとされた。 「早く支度しないと遅れるよ〜」と…… 「ああ〜そうだった!」 今日からずっと律樹の部屋から出勤するんだった。 早くしなくちゃ…… と、バタバタ身支度をしていると、先に終えた律樹が朝食を作ってくれている。 「えっ、嘘! 凄〜い」と、パチパチ拍手する。 「出来る方がする!」と言ってくれる。 「ありがとう〜」頬にチュッとすると喜んでいる。 私は、隣でお弁当を詰める。 「ごめん、常備菜いっぱいだけど……」 「ううん! 嬉しい、ありがとう」 「他の課長たちと一緒に食べなくて良いの?」と、 聞いたが、 「一緒に食べる時も愛妻弁当が良い!」と言って、 チュッと唇にする律樹。 「あっ! ふふ」

  • それでも…愛   第19話 結婚指輪

    喪服から、今度は、綺麗めの白のワンピースコーデに着替えた。 結婚指輪を買いに行くので、なんとなくカジュアルなスニーカーではなく、久しぶりに7cmヒールのパンプスを履いてみようと思う。 「みあり、可愛い」と律樹は、何でも褒めてくれる。 律樹は、白の長Tに黒のパンツ、オシャレなライトグレーのジャケットを羽織っている。 「カッコイイ」と思わず言ってしまった。 「だろう?」と喜んでいる。 「ふふ」 ──だから、モテちゃうんだよね 律樹は、背が高く185cm有るので、私の身長158cmだとヒールを高くしないとバランスが良くないような気がする。 そんなこと、周りは、誰も気にしていないのに…… でも、結婚式とかだと皆んなの前で隣りに並ぶから気にするよね〜と、1人で考えていて…… ──そう言えば、結婚式は、しないのかなあ? と、ふと思った。 私は、式を挙げなくても2人で、写真は撮りたいな〜ウェディングドレスを着てみたい! と思っている。 若いうちに……皆んな今日が1番若いのだから、1日も早い方が良い。 「ねぇ、律!」 「ん?」 「結婚式は、しないの?」と聞いてみた。 「やろうよ! やりたい!」 と言う律樹。 「そうなんだ……」 「ん? みありは?」 「うん、ウェディングドレスを着て、写真だけは撮りたいから、フォトウェディングが良いかな!」と言うと、 「え〜〜! お父さんの立場上、結婚式は、して欲しいんじゃない? 俺もしたいし」と、言われて、 「そうかなあ? まだ会社の人は、私と父が親子だとは知らないよ」 と、言いながら……

  • それでも…愛   第18話 母からの手紙

    「え? 父は母に会ったの?」 と律樹に聞くと、 「お母さんが入院されてた時に、みありが病院から帰ったあと電話で呼び出されて、一度だけお見舞いに行ってお会いしたらしいよ」と言われた。 そして、更に、 「お母さんから『亡くなってすぐは、きっとみありは、大変だと思うから、落ち着いた1周忌の頃に、この手紙を渡して欲しい!』と頼まれたようなんだ」 その手紙をジッと見つめる。 怖くて開けられない。 「お父さん、さっき、みありに渡そうと思ったようだけど、これから入籍に行くのに……って。だから無事に入籍したら、俺から渡してやって欲しいって頼まれた」 開ける前から、涙が流れてしまう。 「大丈夫か?」と、抱きしめられる。 「うん、隣りに居て!」と律樹に頼んで、 2人でベッドにもたれて座る。 律樹が私の腰に手を回してくれている。 ゆっくり封を開ける。 便箋を開くと、母の弱々しい文字が並んでいる。 ────みありへ みあり、あなたがこの手紙を読んでいる頃には、 もう私は、この世に居なくて……1年が過ぎた頃かしら? お父さんに、そうお願いしたからね。 病気になんてなってしまってごめんね。 自分でもこんなに早く逝くとは思ってなかった。 もう少し、みありと過ごしたかった。 だから、最後に我儘を言って、家に帰りたい! だなんて、みありに、いっぱい負担をかけるようなことをして、本当にごめんなさいね。 それでも、やっぱり最後は、3人で過ごした、あの家で過ごしたかったの。 お父さんが居なくなって……みありから、父親を奪うようなことになってしまってごめんね。 お父さんとの離婚原因、最後までき

  • それでも…愛   第17話 法要と入籍

    朝からバタバタと身支度をする。 まだ、1周忌法要なので、黒の喪服を着る。 母の遺影に向かって、 「お母さん、ありがとう。今日納骨するね」と、挨拶をした。 納骨する日に決まりはなく、いつしても良いとされている。 四十九日では、まだ離れ難く、1周忌には、お寺さんの納骨堂に納骨しようと思っていた。 母は、生前『みありが大変になるから、お墓は要らない。たまに、思い出した時にでも、お寺さんに参ってくれれば良い』と言っていた。 そんな話は、もっともっと先のことだと思っていたのに…… お寺に着くと、父が既に到着していた。 「ありがとうございます」と言うと、 深々と頭を下げている。 そして、律樹のご両親と、弟の蒼太さんも来てくださった。 なぜか島田さんまで来てくださっている。 「え?」 「来たいって言うから……」と、律樹。 お礼を言った。 そして、蒼太くんが、 「すみません、朱音は、体調を考えて遠慮させていただきました」と。 「いえいえ、もちろんです。お気持ちだけで、ありがとうございます」とお礼を言った。 そして、初めて私の父に会う、律樹のご両親。 初めまして……が、まさかの母の法要の日。 ご挨拶と共に、手土産案件に対して、深々と頭を下げて、お礼を言われているご両親。 元々、私1人で納骨しようと思っていたので、叔父叔母には、声を掛けなかったのだ。 母は、若い頃に両親を亡くしているので、私は祖父母の存在を知らない。 そう言えば、父方の祖父母は、健在なのだろうか。 追々聞きたい。 なので、今日は、母方の叔父叔母が居れば、父も離婚している手前、居

  • それでも…愛   第16話 律樹の実家へ

    父との対面後、帰るタクシーの中で、律樹はずっとハイテンションだった。 ようやく頭を悩ませていたことから解放されると思ったからホッとしたのだろう。 私の名前を呼んでベタベタしてくる。 「みあり〜」「みあり〜」と、 手を握っては撫でて……ずっとこの調子だ。 「は〜い〜」と返事するのも疲れて来た。 「あ〜良かったね〜」と何度も言っている。 完全に酔っている。 「うん、良かったね〜」 「みあり〜愛してるよ〜」 「ふふ、恥ずかしいから……」と、タクシーの中では、律樹の口を押さえる。 ようやく律樹のマンションに帰宅。 明日は月曜日だが、3連休でお休みなので良かった。 まだお昼の2時半を過ぎたばかりだ。 酔っている律樹をそのまま寝室まで連れて行き、ベッドで寝かせることに…… 「おやすみ」と寝かせた。 私は、部屋着に着替えて、1人でお水を飲みながらリビングでボーっと物思いに耽った。 父の存在…… あの人が本当に、私の父なんだ! 父と母との会話、やはり母は離婚していても、いざと言う時には、父を頼っていたのだと分かった。 特に、遺される私のことを1番に心配して、 父に頼んでくれていたんだ。 そう思うと、やはり涙は流れる…… そして、私は、ひとりぼっちじゃなかったんだ! と思った。 母が亡くなって、親戚の叔父さん叔母さんは、居るが父の記憶はなく、兄弟も居ない。 律樹とも別れていた頃だったから、本当にひとりぼっちになったんだと思っていたのだから…… 私は、ベランダに出て、

  • それでも…愛   第15話 対面

    結局、昨夜は律樹に押し切られて、 長〜〜〜〜い夜を過ごした。 なので、疲れたのだろう。 まだ律樹は隣りで眠っている。 私は朝早くから目が覚めてしまった。 やはり、緊張しているのだろうか…… 起き上がってしまうと律樹を起こしてしまうので、 しばらくジッとしたまま、律樹の寝顔を隣りから眺めている。 ──綺麗な顔立ち、寝顔もイケメン! というか、律樹の全部が好きだから、何でもそう見えてしまうものなのかなあ〜 と、私は、ボーっと律樹を見ながら物思いに耽る。 今日は、実の父だと思われる人に会いに行く…… 何から話せば良いのだろう。 とりあえず、私のことは、いつから分かっていたのか? それに、律樹とのことも知っていて、この会社に誘ったのか? それと、そもそも母とはどうして離婚してしまったのか? それすら、母と話せないまま、お別れすることになってしまったのだから……。 ジーッと見つめていると、律樹が目を開けた。 「あっ! みあり、おはよう〜もう起きたの?」と言う。 「うん、おはよう〜」 私は、律樹を抱きしめて、胸に顔を埋めた。 「ん? どうした?」と優しく聞いてくれる。 「ちょっと怖い……」と言うと、 「そっか、大丈夫! 大丈夫! 俺がそばに居るからな」と言ってくれる。 「うん、

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status